知らない人はいないであろう良い子のヒーローアンパンマンを生み出したやなせたかし氏が先月他界し、この人の元気さから亡くなられるなんて考えられなかっただけに衝撃を受けました。
さて紹介している動画は、これまた知らない人はいないであろう童謡「
手のひらを太陽に」です。なぜパパイヤ鈴木さんが...注目するのはそこではなく、なぜ水木一郎アニキが...注目するのはそこでもなく、故やなせたかし氏が作詞しております。
「
ミミズだって、オケラだって、アメンボだって、みんなみんな生きているんだ友達なんだ」と歌われ、理科講師としてはやはり彼らの生態を知っている範囲で紹介しておかねばと思ったのです。生きとし生けるものすべてを上から目線ではなく同じ高さで同じ地球上の仲間として見る、その素晴らしさに気付いたのは管理人が大人になってからで、幼少期は「
友達ぐらいは自分で選ばしてよ...」とか思っていたのは秘密だ。グロいとか言われそうなので各々の生物の写真は掲載しません。適宜ググって探して下さい。
ミミズ
環形動物門貧毛綱
分類学上において、「
貧毛綱」っておいコラここの管理人にケンカうってんのかオラオラな位置に存在するひも状の動物の総称で、目がなければ足もない。体節ごとにちょっと毛がある。目がないといっても体表には光を感知する視細胞があり、光から逃れようとする負の走光性をもつ。オスともメスとも言えない
雌雄同体で、でも交接(交尾、って感じではなくひもが強くからまってる感じ)を行って精子を交換し、産卵する。
トカゲの尻尾切りと同様、ミミズも危険を感じると自ら体をちぎる
自切(じせつ)をする。土を掘っただけなのに自切されると、なんかとても申し訳ない気持ちでいっぱいになる。のちに分かれた2つの部分のうち頭部を含む前半身から後半身が再生。後半身は再生せず逃げるためのおとりにされてしまう。
よく「ミミズの心臓は○個!」みたいな話を聞くけれども、セキツイ動物のような丈夫な筋肉でできたポンプ的な心臓は持たず、血管の部分的にふくらんだ箇所を脈動させて血液を循環させている。そもそもこのふくらんだ部分を心臓と呼ぶべきかどうか、なんだけども、学術論文等では「〜 heart」と書かれており、それが7〜9か所ある。自切したらそりゃ数も減る。ちなみにセキツイ動物や環形動物のように、血管があってその中を血液が循環する仕組みを「
閉鎖血管系(血液が直接細胞に触れない)」という。それに対して、コン虫みたいに何となく体液が体全体をめぐっているような仕組みを
開放血管系という。
ミミズの血液は赤いけれども赤血球にあたるものは存在せず、エリスロクルオリンというヘモグロビンと同じ鉄系呼吸色素(鉄だから赤色)が血しょう中に溶け、それが酸素を運ぶ。
食物連鎖では最下層に位置し、いろんな動物に抵抗空しく食べられてしまう。彼らにとっては不本意ながらも釣りのエサとしては非常に優秀。ではミミズは何を食べているのかというと、それは土。土を飲み込んで、そこに付着している有機物や微生物を消化吸収する。どういうわけかミミズは汚染物質に強く、飲み込んだ土に付着している汚染物質を時限爆弾のように体内にため込む。いわゆる生物濃縮が進み、ミミズを食べた動物にこの爆弾が移動し、いつかは人体に害が及ぶこともある。ただし見方を変えれば、ミミズを使って汚染された土壌をキレイにするという人間の身勝手な利用方法もあったりする。なお、ミミズと土壌の関係を最初に研究したのはダーウィン。
ミミズにまつわる迷信として有名なのが、以下のの2つ。
>ミミズが鳴く
→ズバリ鳴かない。地下から響き鳴き声はケラだとされている。
>おしっこをかけると#@%☆が腫れる
→スバリ腫れない。実践&エキサイティング(?)が信条の管理人は
なぜかそれを知っている。
ケラ
節足動物門汎甲殻類六脚亜門昆虫綱バッタ目キリギリス亜目コオロギ上科ケラ科
「おけら」という俗称をもち、地下にトンネルを掘って生活する。管理人がよく言われる「この虫けらめっ!」という「けら」とは関係ありません。池や川の近くの街灯に向かって迷いなく飛んでいく姿や、しろかきした水田に苦しさと切なさを抱えてプッカリ浮かんでは想像以上の速さで泳ぎ去っていく姿を見たことがあるかも。
分類体系を見ての通りバッタの仲間なので
不完全変態(卵→幼虫→成虫)のコン虫。体長は3cmほどではねは4枚。冬越しの姿は幼虫または成虫。オスは前はねに発音器官を持ち、鳴き声をトンネル内で共鳴させて大きくする。実はメスもちょっと鳴く。幼虫も成虫も雑食で、植物の根や種子,他のコン虫,友達と歌われたミミズも美味しく頂きます。
全生物的に見てもケラは活動範囲が広く、「歩く・掘る・飛ぶ・泳ぐ・たまに跳ねる」という
人類未到の運動能力を有し、彼らに国境など意味を成さない。ただし飢えに弱く、水分が不足すると一晩もたない(根性論ではどうしようもない代謝の問題)。
ミミズの項でも書いた通りケラも含めてコン虫の仲間は開放血管系で、透明な体液が背中にある背脈管という心臓っぽい部分の脈動のおかげで体内全域をなんちゃって循環している。この体液は酸素を運んだりせず、呼吸は体内を縦横無尽にはしる気管にマル投げ状態。
ケラが生物学的に注目を浴びるのは前足と体の形。土を掘るのに適した前足、トンネルを掘り進むのに適しただ円形の体にビロード状の毛、種の壁を越えてそれはまるでモグラ(学名モゲラ)。生活している環境やスタイルが似ていると、種が異なっていてもその環境・スタイルに適した体の形を獲得していくコトを生物学では「
適応集中(=しゅうれん進化)」といい、この良い例となる。適応集中の他の例は、イルカとサメ、とか。
アメンボ
節足動物門汎甲殻類六脚亜門昆虫綱カメムシ目カメムシ亜目アメンボ下目アメンボ上科アメンボ科
「
アクエリアス」なんていうカッコイー学名を持ち、水走りの術を使う
Oh! Ninja!なコン虫。水瓶座(アクエリアス)の管理人とはちょっと縁がありそうでいて、しかし虫けらごときと一緒にされたくないという複雑な気持ちにさせてくれる。名前の由来は雨ではなく、カメムシの仲間らしく捕まえると独特のにおいを発し、これが甘い飴のにおいがすることから。確かに臭くはないんだけど、キャンディーというよりは佃煮にみたいなにおい。ツクダニンボやな。
コン虫なのであしは6本。はねを持つ種は4枚のはねで飛ぶ。
不完全変態なので卵→幼虫→成虫と成長し、幼虫・成虫ともに肉食で、水面で生活し、成虫の姿で冬越しする。とは言っても冬越しの姿は観察記録が極端に少なく、水辺の落ち葉の下とか泥の中とか、いろいろ言われている。
なぜ水面で沈まず生活できるかというと、6本のうち後ろ4本の長いあしには全体的に細かな毛が生えていて表面積が大きく、この4本を水に浮かべるように4方向に伸ばし、水の
表面張力(表面積をできるだけ小さくしようとする性質)を利用しているから。軽くてかつ水面に接している面積が大きいと物が浮く(水面に1円玉を浮かべる等)のと同じ理屈。しかし所詮は表面張力という他力。石けん水の元ではその効力を失い、アメンボといえど溺れる。
なんか...ゴメン...。
水面でもがいてる他のコン虫がいれば、その動きで発生した水面波をあしの毛がキャッチして群がってくる。もちろん助けるつもりなど毛頭なく、こんな食物連鎖バリバリの世知辛い世の中でありますし、容赦なく獲物に針のような口を突き刺しては消化液を注入し、消化されたものを吸い尽くす。管理人が手で細かい波を発生させても群がってくる。
なんか...ゴメン...。
管理人は観てないけど、その昔放映されたドラマのせいでアメンボの存在がキレイな水を表す
指標生物であるような誤解がうまれたのですが、水質階級の判定基準となる指標生物は30種でその中にアメンボは含まれていない。確かにアメンボは食物となる他のコン虫がいない(自然が豊かでない)場所では生活できないし、洗剤たれ流しの川では生きることが難しい。しかしアメンボのいる場所がすなわちキレイな水!とも言えない。管理人の個人的な観察からだと、どちらかというと少しにごった水にたくさんいる気がする。
紹介した3つの動物に共通する特徴を探ろうとしたけど特に血潮は関係なかった。血管を持ってるのはミミズだけだし。そもそも「手のひらを太陽に」の歌詞は、当初アメンボではなくナメクジだったらしいし。それでもあえて共通項を探すなら、それは「
毛」。毛の生えた友達!おいおい、世界平和は近いなっ!