2013
03 24 |
:: 神戸大学附属中等教育学校 説明会(2)
[ 投稿 水口佑@管理人 ]
「神戸大学附属中等教育学校 説明会(1)」からの続きです。
神大附属中等の入試日程や試験科目を語る前に、これを読んでいる方にとってはとても大事なことだと思うので、公立中高一貫校に関わる法制度を紹介しておきます。公立中高一貫教育校は平成11年に施行された「学校教育法等の一部を改正する法律」によって制度が発足しました。私立とは異なりその運営はすべて公費でまかなわれていることから、公平・平等が基本理念となります。そのため「受験準備に偏したいわゆる『受験エリート校』化など、偏差値による学校間格差を助長することのないよう十分配慮すること」が国会審議で求められ、法案成立の際に「入学者の決定に当たって学力試験を行わない・受験競争の低年齢化を招かない」等の[ 附帯決議(PDF) ]が付されています。 どれだけとんがった事をしようにも守らなければならない法の壁は厚く、それほど自由の利かない国立ですから、入学を検討される方はこの基本理念(公平・平等)と附帯決議の内容を充分に理解しておく必要がありそうです。公立中高一貫校が実施する「それって学力検査なんじゃないの?」と思われるものはこの附帯決議のために名称を「適性検査」としており、神大附属中等もこの路線を踏襲します。そうです学力検査ではないのです。気のせいなのです。 なお、これほど公立中高一貫校が注目される昨今、当然ながら私立学校の連合会も黙っていないわけで、文部科学省に「公立中高一貫教育校の入学者選抜における「学力検査」の取扱いについて(意見)」といった「適性検査ってなんやねん!」という牽制球をはなっています。説明会で頂いた資料の中にはとある学習塾の広告の混じったタブロイド版情報誌があって、その広告では神大附属中等への合格までをプロデュース!という文句のもと新小学4・5年生向けのイベントを打ってあり、内心「こういうことするとまた私学連に火がついちゃうぞー」とか思ったわけです。圧力がかかると決定事項も曲がりかねない、そんな懸念を学習塾はまだ持っておいたほうが良い時期です。私学連を敵に回して、下手すると自分の首を絞めかねません。 そしてその神大附属中等が予定している適性検査の内容ですが、現在2つの案(A,B)まで絞り込まれています。上記のとおり学力検査ではありませんので、国語・算数・理科・社会といった科目名は登場しません。以下、なんとなく察してください。そして、まだすべてが検討中であることも考慮下さい。
説明会では、言語表現,数理探求,自然環境,市民社会はいずれも小学校履修範囲を超えない旨を強調しておられました。私学の入試と違って履修範囲を超えられないのは当然のことですが、だからと言って内容が簡単であるとは限りません。特に数理探求における「プロセス重視」は、パターン化に染まった受験勉強では養えない自己表現力が必要となりそうです。面接については「堅苦しくないものにしたい」ともとれる趣旨の話をしておられました。配点・採点基準の事後公表も検討しているそうで、透明性の高い検査は公正の観点からも歓迎したいです。 次に検査日程です。神大附属中等がある兵庫県は入試解禁日(統一入試日)を設定しており、兵庫県に籍を置く限り解禁日前に試験を実施することは許されません。学校側も承知しており当然それに準じます。ということは神大附属中等の検査実施日は必然的に解禁日かそれ以降となります。兵庫県(というか近畿2府4県)の入試解禁日は、年度によって異なるもののここしばらくは1月の中旬頃の土曜日で落ち着いています。一般募集を始める初年度は募集人数が40名(男女概ね同数)です。次年度以降は80名簿集。説明会の注目度から考えて、日程・検査領域次第ではとんでもない倍率になるかも知れません。しかしやはりここも検討中の事項ですし、そもそも1日入試なのか、専願制をとるのか等決まっていないことは多いです。 いくら教科書範囲を超えないとしても、関西私学入試の男子の主流は3科ですし、重ねて男子は記述式が苦手な場合が多いです。それに対して女子にとっては様々な意味で願ったり叶ったりの学校となるのでしょう。成績優秀な児童を集めたいと表立って願っているわけでは無いでしょうが、A案でもB案でも市民社会が自然環境と同等の扱いである限り、入学直後の男女格差を生む可能性をはらんでいます。日程次第では、共学という観点から見れば関西学院・須磨学園,3科という観点から見れば六甲中、このあたりの受験者層が大きく動きそうな気がしています。 公平・平等の理念と附帯決議に縛られてそれでもなお注目度が高いのは、やはり学費の面でしょうか。説明会の資料によれば、神大附属中等の6年間の必要経費は約120万円(高校の無償化が継続している場合)。仮に無償化が廃止されても+約35万円。6年間でこれですから私学の学費とは比べようもない負担減です。ただし負担が軽いということを決定打に学校選びをすることは危険ですので、今後明確になってくるアドミッションポリシー(受け入れ方針)や神大附属中等特有の人材育成プログラム「Kobeポート・インテリジェント・プロジェクト(PDF)」がご家庭の教育方針に沿っているかどうか、注視しておく必要はあります。 今回の説明会は、検討中の事項を発表することよりも、神大附属中等が地域のニーズを直接採り入れる場という意味合いが強いです。こういった趣旨の説明会はこれで終わりではなく、来たる2013年6月2日(日)に開催されるオープンスクールでも同様の説明会が併催される模様です。内容や申込みについては4月中に神大附属中等のウェブサイトにてお知らせがあるそうです。神大附属中等教育学校に興味のある方は、学校や在校生の雰囲気を直接知るためにもオープンスクールにはぜひともご参加を。あ、大分先の話ですが文化祭も開催されます(9月14〜15日)。生徒会主導で目標来客人数5,000人!と気合いの入ったものなので、こちらもぜひ。いや〜、この注目度からしたら5,000人どころじゃ済まないと思うけどね。 この時期に、私学中入試が白熱するこの地域で一般募集を始めようという新しい神大附属中等がどのようなスタイルを提案・確立してくるか、期待しながらも期待しすぎず、塾講師としても理総研管理人としても、今後の動向に注目し続けてみます。 (2013-03-24 02:49:36)
コメント> 8 件
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||